トラックドライバーが「転職したいけど動けない」本当の理由|現役が本音で解説

トラックドライバーが転職したいけど動けない本当の理由|車庫で大型トラックを見つめる現役ドライバー 転職・会社選び

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「うちは残業代がちゃんと出るから、いい会社だよ」。この業界では、こういうセリフが真顔で交わされます。法律で決まっていることが、会社の”メリット”として語られています。おかしいと思いませんか。以前、同業の知り合いにその話をしたら、彼は「うちはどんぶり勘定だから」と苦笑いしただけでした。怒るでもなく、諦めるでもなく、ただ当たり前のこととして笑っていました。私はあの苦笑いが、この業界の全部を表していると思っています。

私はこの業界に20年以上いる現役ドライバーです。4トンから始めて大型、けん引と乗り継いで、今は海上コンテナのセミトレーラーを引いています。現場で見てきたから言えることを、今日は書きます。「転職したいけど動けない」——そう言ったまま何年も動かないドライバーが、本当は何に縛られているのかという話です。

「働いた分はちゃんと残業代が出る」が自慢になる業界

まず、私がこの業界で見てきた”感覚の麻痺”の話からです。

求人票に「残業込みで月60時間程度」と書いてある会社があるとします。入ってみたら実際は最低80時間。じゃあ求人票の「60時間」を本当に経験した先輩はいるのかと聞いて回っても、誰もいない。最初から存在しない数字が、堂々と紙に印刷されているわけです。これはどこか一社の話ではなく、この業界で長くやってきて、何度も出会ってきた光景です。

そして2024年問題が来ました。時間外労働を以前より抑える会社は増えました。ルールとしては正しい方向です。ただ、給料の体系はそのまま。時間外だけが削られて、手取りが落ちた人が大勢います。元勤務先の大手の先輩は、こう言いました。

「そのままの給料体系で時間外だけ減らせば、そりゃそうでしょうね」

怒りですらない、乾いた声でした。時間で稼ぐ仕組みのまま時間だけ取り上げれば、給料が減るのは計算どおりです。規制だけが守られて、給料の作り直しは置き去りにされた。それがこの2年、多くの現場で起きたことだと私は見ています。この構造と、給料を落とさなかった会社との差については2024年問題でも給料を落とさない運送会社の選び方で詳しく書きました。

ここでひとつだけ、頭の隅に置いておいてください。同じ規制、同じ業界でも、給料の作り方は会社によってまったく違います。この話は後半でもう一度します。

動けない理由①:自分の技術の値段を知らない

「ドライバーなんて底辺職」「誰でもできる仕事」。世間からそう言われ続けて、いつの間にか自分でもそう思い込んでいませんか。学歴がないから。持っているのは免許だけだから。どうせ他に行っても同じだから。そうやって自分の値札を自分で下げている人を、私はこれまで何人も見てきました。

では聞きます。あなたの会社の事務所に、あなたと同じレベルで運転できる人間が何人いますか。

毎日あなたが当たり前にやっている運転を、配車係が代われますか。所長が代われますか。誰でもできる仕事なら、あなたが休んだ日に事務所の誰かがハンドルを握ればいいはずです。でも代われない。代われないということは、それは替えの効かない技術だということです。そもそも4トンだって、いきなり乗れる車ではありません。大型やけん引ともなれば、免許も技術も、誰でもすぐ手にできるものではありません。

それなのに現場では、「あそこの会社よりはうちのほうがマシ」「俺はまだいいほうだ」という傷の舐め合いばかりが続きます。下と比べて安心している限り、思考はそこで止まります。あなたの技術の値段は、下との比較では一円も上がりません。

変えるべきなのは、たったひとつの言葉です。会社に「雇ってもらっている」のではなく、自分の技術を「買ってもらっている」。あなたと会社は、技術と給料を交換している対等な取引相手です。安く買い叩かれていると感じるなら、別の買い手を探していい。それは裏切りでもわがままでもなく、ただの取引です。

動けない理由②:仲間意識という名の鎖

もうひとつの鎖は、技術の話より根深いです。仲間です。これは理屈ではなく、私が実際に経験した話をします。

私は昔、大手を辞めました。辞めてしばらく経ったころ、元先輩から「飲もう」と連絡があって、元同期や元後輩たち7人ほどで集まりました。懐かしい顔ぶれで、最初は楽しい酒でした。

途中で、別の飲み会にいた後輩のひとりが合流してきました。かなり酔っていました。席について少しすると、その後輩が私に絡み始めました。

「あんたは逃げたんだよ。俺ら後輩を残して、逃げた」

最初は宥めました。まあ飲め、と。でも同じ言葉を何度もぶつけてくるので、途中で私も言い返しました。

「今の環境に満足してないなら、お前も逃げればいい。その勇気がないくせに、辞めた人間に噛みつくな。なんで後輩のために俺が自分の人生をかけなきゃならないんだ。自分の道は自分で切り開けよ」

座が凍りました。そのとき、誘ってくれた元先輩が、怒っている後輩の肩を押さえながら言ったんです。

「こいつには、大手の名前を捨てる勇気があった。人生がダメになるかもしれないリスクを取る勇気があった。その勇気がまだ出せない俺らが、こいつを責めるのはおかしいだろう。お前に、それができるか」

私はそこで泣きました。いい歳をした男が、居酒屋で泣きました。責められている間は意地を張れたのに、庇われた瞬間に、こらえきれませんでした。自分がやったことの意味を、辞めてから初めて、他人の言葉で言い当てられたからです。

大手を辞めたトラックドライバーを、居酒屋で元先輩が肩に手を置いて庇う飲み会のシーン
大手を辞めた私を、元先輩が庇ってくれた夜だった。

この話を書いたのは、自慢のためではありません。先輩の言葉をよく見てほしいんです。先輩は「こいつには能力があった」とは言いませんでした。「運が良かった」とも言いませんでした。言ったのは、勇気があった、それだけです。「動けない」の正体は、能力でも状況でもなく、その一歩分の勇気です。あの晩、辞めた側の私と残った側の先輩たちの間にあった差は、本当にそれだけでした。

そして「辞める=裏切り」という空気は、辞めたあとも形を変えて残ることがあります。人によっては、配達先や道で会っても無視された、という話を聞きます。自分より条件のいい会社に行ったのが許せず、嫉妬をぶつけられることもあるようです。「〇〇さんに世話になっただろう」と、恩義の形をした縛りを持ち出されるケースもあると聞きます。さらに、これは私自身が体験したわけではなく、あくまで見聞きした話としてですが、辞めた相手に幅寄せのような危険な嫌がらせをする人間がいる、という話も耳にしたことがあります。もし万一そういう目に遭ったら、我慢せずドラレコの記録を残して、警察や会社に相談してください。仲間内のいざこざで済ませていい行為ではありません。

仲間は大事です。私も元先輩たちとの縁は今も切れていません。でも、あなたの給料を払ってくれるのは仲間ではありません。あなたの人生に責任を取ってくれるわけでもありません。仲間意識を理由に自分の人生を止める必要は、どこにもありません。

正直に言うと、私の転職は”成功物語”ではありません

ここまで読んで、「勇気を出して動いたら人生がバラ色になった」という話を期待した人もいるかもしれません。でも、正直に打ち明けます。私が大手を辞めて移った先は、はっきり言ってブラックでした。額面の月給は確かに上がりました。ただ実働が長くて、時間で割った単価はむしろかなり落ちました。稼いだつもりで、体を安く切り売りしていた——それが実際のところです。

じゃあ大手に残っていれば正解だったかというと、それも違います。当時の大手は残業管理がしっかりしすぎていて、残業で手取りを積む余地がなく、そもそも思うようには稼げませんでした。ベースアップも鈍って、給料は下がるか、上がってもごく緩やか。この先の天井が、はっきり見えている気がしていました。当時の私は、とにかく金が欲しかった。だから動きました。その選択自体を、私は後悔していません。

ただ、この失敗ではっきり学んだことがあります。「動くかどうか」と「どこへ動くか」は、まったく別の問題です。勇気を出して一歩を踏み出すことと、踏み出した先の会社を見極めること。この両方をやって初めて、動いた意味が出ます。私は前者はできましたが、後者で一度しくじりました。だから次に動くときは、「どこも同じ」で選ぶのをやめました。

「どこも同じ」は、動かない言い訳です

前半の伏線を回収します。「どうせどこの会社も同じ」。動けない人ほどこれを口にしますが、20年この業界にいる人間として断言します。同じではありません。私は大手と中小の両方を経験しましたが、給料の出方、拘束時間、荷物、人間関係、何もかも違いました。その中身は大手物流と中小運送、両方で働いて感じた違いに書いています。

同じ「ドライバー募集」の紙切れでも、裏にある会社の中身はまったく別物です。求人票のどこを疑い、何を確認すべきかはトラック転職で失敗しない会社の選び方にまとめました。海コンのように「やめとけ」と言われがちな仕事でも、実態を知れば印象が変わるはずです(「海上コンテナドライバーはやめとけ」は本当か)。面接の場で会社の本音を見抜く方法は運送会社の面接でする逆質問で解説しています。

条件がまったく違う会社が現実にある以上、「どこも同じだから動かない」は成立しません。それは事実ではなく、動かない自分を守るための言い訳です。

動いていいんです

誰の許可も要りません。会社の許可も、先輩の許可も、後輩への義理立ても要りません。あなたの技術には値段が付きます。その値段を今の会社の言い値でしか知らないままでいることのほうが、20年選手の目から見て、よほどリスクです。

今すぐ転職しろ、と言っているのではありません。まず、自分の技術が外でいくらで買われるのかを知ってください。値段を知ってから残るのと、知らないまま残るのとでは、同じ「残る」でも意味がまったく違います。前者は選んだ結果で、後者はただの現状維持です。

もし一人で求人を眺めて自分の値段を判断するのが心細いなら、アドバイザーに相談しながら求人を紹介してもらえるココカラ・ドライバーのように、誰かと話しながら動ける選択肢もあります。一人で抱え込まず相談相手を持つのも、立派な一歩です。

トラックの運転席でスマホを見てドライバー向け求人サイトを眺める現役トラックドライバー
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よくある質問(FAQ)

Q. 転職したい気持ちはあるのに、どうしても一歩が踏み出せません。

踏み出せないのは、あなたの意志が弱いからではありません。多くの場合、自分の運転技術が外でどれだけ評価されるかを知らないことと、辞めることへの後ろめたさが、足を止めています。いきなり辞める必要はありません。まずは求人を眺めて、自分の技術に今いくらの値段が付くのかを知るところからで十分です。値段が分かれば、残るにせよ動くにせよ、自分で選んだという実感が持てます。

Q. 今の運送会社を辞めたいのですが、辞めたあとに嫌がらせをされないか怖いです。

正直に言うと、辞めた人間への風当たりがまったくゼロだとは言えません。無視や嫌がらせの話も、業界では見聞きします。ただ、それは「辞めようとしている人」を引き止めるための空気です。辞めてしまえば、昔の同僚と毎日顔を合わせる環境からは離れられます。配達先などでたまに顔を合わせることはあっても、日々をともにする相手は新しい職場の人たちに変わります。もし万一、幅寄せのような危険な行為をされたら、我慢せずドラレコの記録を残して、警察や会社に相談してください。仲間内の話で済ませる必要はありません。

Q. 「どうせどこの会社も同じ」だと思ってしまいます。

長くこの業界を見てきた実感として、それは思い込みです。大手と中小、同じ海コンでも、会社が違えば給料の出方も拘束時間も人間関係も別物でした。「同じ」だと決めつけているうちは、動く理由が一生見つかりません。まずは条件の違う会社が現実にあることを、求人を見て確かめてみてください。

まとめ:足りないのは能力ではなく、一歩の勇気

あなたが動けないのは、技術がないからでも、状況が悪いからでもありません。自分の技術の値段を知らされないまま、仲間という鎖に足を取られているだけです。私を庇ってくれた先輩の言葉を借りれば、必要なのは「名前を捨てる勇気」と「リスクを取る勇気」、それだけでした。まずは外の値段を知るところから始めてみてください。具体的な一歩の踏み出し方はトラックドライバー転職サイトおすすめ3選にまとめています。

夕暮れの運送会社の門を、ボストンバッグを持って出て歩き出すトラックドライバー
動くと決めれば、いつもの車庫も違って見える。

※本記事は筆者自身の経験と、見聞きした一般的な傾向に基づく内容です。特定の会社・個人を指すものではなく、一個人の見解です。実際の転職判断は、応募先の条件や最新の求人情報を必ずご自身で確認してください。

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